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June 28, 2018

アイヒマン調書

アイヒマン調書を読みまして、いや期待してなかったけど、思わず引き込まれるような内容でした。

アイヒマンとはご存知の方もいるかもしれませんが、ナチスドイツにおいてユダヤ人問題の最終解決として、ユダヤ人の組織的な虐殺の計画や実行に深く関与した人物で、ドイツが戦争で負けそうな状況下でナンバーツーであったヒムラーからストップをかけられたにもかかわらず、無視して虐殺に邁進する、一度スイッチが入ったら止まらない感じもありまして。

この調書は、戦後アルゼンチンに亡命したのを、イスラエルの諜報機関に発見、拘束、拉致されイスラエルに連れていかれ、そこでの取り調べを受けたときのものです。取り調べは基本自由発言をベースに進められていくのですが、取り調べに当たったイスラエル警察の大尉アヴネール・レス自身も父親を強制収容所で殺されるという悲惨な経験を持ち、その感情を抑えながらの冷たくも熱い二つのぶつかり合いが火花を散らす。

ここでアイヒマンは徹底的に逃げを打ちます。私は知らなかった、直接殺してない、決定には関与してない、輸送しただけだ、国外への移住を支援しただけだ、命令されただけでどうしようもない。当時の自分の責任は命令に従うことでそれ以外の選択肢はなかった。彼の言い分です。

迎えうつレスは、他の記録や証言を駆使して攻めます。彼のサイン入りの命令書、残された記録、部下や関係者、接触した人からのさまざまな証言、同僚や上司の証言。これら全てを口裏あわせて嘘をついているというのか?

これに対してアイヒマンは真っ向から否定し、彼らを嘘つき呼ばわりします。その姑息に逃げ回る態度は、およそ600万人の赤ちゃんや子供まで含めた人々を虐殺することを積極的に進めた人間として、そのギャップの大きさに驚かされます。

また彼自身読書をほとんどしたことがなく、命令でシオニズム運動(ユダヤ人の独立国家を作ろうとする運動)の主導者ヘルツェルの著作を読んで要約することが最初であり、そのことがユダヤ人課への足がかりになったようです。頭はいいのですが、基本のところ何故それをすべきかが抜けている。

さらにナチスドイツでは、トップで陰謀論に傾倒する者も多かったのですが、彼はそれら陰謀論を軽蔑していた様子もはっきりとわかります。そういった意味では、高い知性と洞察は持っていた。でも人間としての、あるいは良心や感情の何かが徹底的に抜けているのです。

今まで間接的にアイヒマンの言葉は読んできましたが、このように取り調べの文脈の中で見てみるといろいろ見方が調整できます。他の人の解釈という色眼鏡を通したアイヒマン像よりも生の言葉は一体どうだったのかの方が重要ですね。改めてそれを再確認した一冊です。

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